元ICU看護師が教える。心不全の看護について

ICU知識
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こんにちは。”ナスマガ”のYUKIです

ようこそ!Nurse Magazineへ。

お疲れさまです。今日も暑いですね。

本日はやっと2020年?東京オリンピック開催です。

なぜ、オリンピックをしないといけないのか?上級国民の考えていることはよく分かりませんし、誰も「中止」と言う責任を取りたくないんだなと、矛盾の制作ばかりで日本らしい感じですね。

この先、日本に不安しかありませんが。

決定したオリンピック一人でも重症化する方が発生しないことを祈ります。こんなん、現地で働く医療従事者さんはどんな気持ちなんかな。救急外来の人とか、全然休めないやろうし…

さて、話は変わって今日はICU知識について書いていきます。

「心不全」です

お先に参考文献を紹介します

心不全について

病態生理

 心不全とは、どのような病態でしょうか?

心不全とは「何らかの原因により心臓のポンプ機能が低下し、全身の各組織が必要とするだけの血液を拍出できない状態」のことです。近年では、生活習慣の欧米化に伴い、虚血性心疾患による心不全、また、高齢化に高血圧を背景とする拡張不全が増加しています。マクドとかモスとか美味しいですもんね…

<左心不全>
左室の収縮力が低下すると、全身へ血液を送り出す働きが低下し、チアノーゼや血圧低下、頻脈による動悸、意識障害などの症状が出現します。また、左房の前には肺があるため、血液のうっ滞は肺に広がり(肺うっ血)、呼吸困難や息切れなど呼吸苦症状が起こり、やがて右心系にも負荷がかかり右心不全の症状も合併します。
血行動態的には、心拍出量が低下し左房圧が上昇します。
<右心不全>
右室の機能低下により、右室から拍出しきれない血液が右心系と静脈系にうっ滞し浮腫、胸水・腹水貯留、頸動脈怒張、肝浮腫大などが出現する。
血行動態的には、右房圧(RA)・中心静脈圧(CVP)が上昇します。

病気が見えるより引用

治療

治療方法の選択に関してはフォレスター分類を用いることになります。

これは循環器看護師には必須の知識になりますので、確実に覚えたほうがいいです。

心不全で使われる分類 (NYHA, Forrester) - Things in the closet

過去にフォレスター分類について記事にしているので、こちらも参照にしてください。

薬物治療

利尿薬

フロセミド(ラシックス)

  • ナトリウム利尿薬
  • Naと水を同時に排泄させる
  • 静脈系の血管拡張作用も有るため、利尿効果がより早く出現される

サムスカ

  • 経口の水利尿薬
  • 細胞内外から水を体外に排泄するため血管内脱水になりにくく、血圧低下や腎機能悪化を起こしにくい

スピロノラクトン(アルダクトン)

  • 他の利尿薬に比べて利尿作用は弱いが、アルダクトンの作用を遮断し、心保護を目的とする

静脈拡張薬

ニトログリセリン(ミオコール)

  • 急性心不全に対し、低用量静脈系血管を拡張し、前負荷軽減効果を発現
  • 中等量では、動脈系血管を拡張し後負荷軽減効果を発現。

ニトロール

  • ニトログリセリンと比較すると、動脈系血管拡張作用は弱く、血圧低下が少ないので、血圧が高くない心不全における肺うっ血に使用しやすい

ハンプ

  • 主に静脈系容量血管を拡張させ前負荷を軽減することでうっ血を改善させる

動脈拡張薬

高用量ニトログリセリン

  • 冠動脈拡張薬
  • 冠動脈だけでなく、全身の血管を拡張させる。そのため、心筋の血流が改善させ、心臓の負担が少なくなる

ニカルジピン

  • 心臓や体の血管を拡張し血流の増加、血圧を下げる

強心薬

ドブタミン塩酸塩

  • 心筋のβ1受容体に直接反応
  • 低用量では心拍数をそれほど増加させることなく、強心作用とともに抹消血管を拡張し後負荷軽減が得られる

ドパミン塩酸塩

  • 心筋の増加β1受容体に直接作用し強心作用を発現
  • 低用量では、ドパミン塩酸塩を介して腎動脈の拡張を起こし、利尿効果を得られる
  • 高用量では、抹消血管のα1受容体に作用し血管拡張を起こし血圧を上昇させるために使用する

ジギタリス製剤(ジゴキシン)

  • 心筋に直接作用し、心収縮力を増強するが、カテコラミンと比べて強心作用は弱い
  • 徐脈になりやすい

補助循環

  • 大動脈バルーンパンピング(IABP)
  • 経皮的心肺補助(PCPS)
  • 補助人工心臓(VAD)
  • インペラ(Impella)

呼吸管理

心不全の急性期に行う陽圧換気は、肺胞の中の水を血管に押し返したり、呼吸を補助することを通して、呼吸を楽にする効果がある。

※急性心不全による呼吸困難の原因
肺うっ血・肺水腫による呼吸困難、胸水・特に腹水による呼吸困難(胸水がある程度貯留すると、肺の容量が減少する為、呼吸困難を生じ、腹水でも横隔膜の内部から頭側へ圧迫することで、特に仰臥位になったときに呼吸困難が生じます)、心臓からでる血液(心拍出量)が非常に少ないことが原因で、労作時の呼吸困難や安静時の倦怠感が起こる(LOS:低拍出量症候群)

呼吸困難に対する治療

一般的な治療としては、胸水が貯留しているときは経鼻カニューレなどの酸素投与を行い、肺胞内の酸素濃度を上げれば、動脈血酸素飽分圧(PaO2)は改善することが多い。しかし、肺うっ血や肺水腫の場合、通常の酸素投与では肺胞内と肺間室の水が邪魔をすることで、肺胞まで取り込んだ酸素が肺胞から血液の中に移動できない為、陽圧換気が必要となる。陽圧換気を行うことによって、肺胞内から血液への酸素取り込みが改善し、酸素化が良くなります。

EX)

<ネーザルハイフロー>

  • 特殊な鼻カニューレを用いて、酸素と空気の混同気体を高用量で流すことで、軽い陽圧をかけながら酸素投与を行う方法。
  • 30〜60L/minの高用量で最大FiO2100%の酸素投与が可能

<非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)>

  • 気管挿管を行わずに、特殊な気密性の高い鼻、または鼻口、特に顔マスクと専用の呼吸器を使用し、最大FiO2100%の酸素投与と陽圧換気を行う。COPDを合併し過剰なCO2貯留を伴う心不全や肺水腫を伴うような急性心不全などに有効な治療です。
NPPVマスクの使用・フィッティングのポイント|正しくお使いいただくために|医療関係の皆様へ|日本光電

看護

①肺うっ血に伴う呼吸困難の緩和

起座位、あるいはファウラー位(半坐位)などの患者が呼吸を楽にできる体位の保持

右心に戻る静脈血が減少し、肺うっ血は軽減する。起座位によって横隔膜は下降し、大胸筋や補助呼吸筋の呼吸運動はスムーズになるため、換気量は増加。また、身体の安静を保ち、心筋酸素消費量の需要を少なくすることが大切です。

呼吸が苦しいとき、臥位よりも座位のほうが楽なのはなぜ? | 看護roo![カンゴルー]
呼吸が苦しいとき、臥位よりも座位のほうが楽なのはなぜ? | 看護roo![カンゴルー]

②酸素療法と気道の浄化

肺うっ血による有効な呼吸面積の減少、および換気・拡散障害によって、呼吸困難が生じる。

組織のへの酸素供給を高めるために、酸素吸入が行われる。PaCO2が上昇している場合は、高濃度の酸素投与はCO2ナルコーシスを引き起こすので注意が必要です。咳や喀痰の排出を行って気道浄化を行い、換気障害をできるだけ少なくするように援助を行う。

CO2ナルコーシスとは?
呼吸の自動調整機能がうまく働かず、二酸化炭素(CO2)が体内に貯留し意識障害を呈する病態です。
慢性的に低酸素状態にある慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して、高濃度の酸素を投与すると、体内の酸素が過剰に存在すると感知し呼吸抑制もしくは停止します。
バックバルブマスクでの換気や気管挿管下呼吸器による換気などで強制的に換気を行い、体内から二酸化炭素を出すことで症状改善の期待ができます。

③治療への援助

肺うっ血の治療には一般的に医師の指示にてナトリウムと水分摂取量の調整が行われ、また、循環血液量とうっ血を減少させるために、利尿薬・血管拡張薬が使用されます。

代表的な治療薬にはループ利尿薬があります。

静脈の拡張により前負荷が減少し、肺静脈圧の急激な減少や、動脈圧の減少効果があります。

利尿薬の使用により電解質の不均衡をきたしやすくなるため、血清電解質の検査結果に注意する必要があります。

低カリウム血症では、筋力の低下や腸管麻痺、不整脈を引き起こします。

低ナトリウム血症では、全身倦怠感、意識障害、吐き気、筋痙攣などを起こすことがあります。

脱水が起これば血液の粘稠度が高まり、安静を維持している患者では、静脈血栓や肺梗塞を起こす危険性もあります。特に心房細動のある患者は、肺塞栓の危険性が高くなります。心拍出量の減少をきたした場合には、強心薬の投与が行われます。ジギタリスが投与される場合は、ジギタリス中毒に注意が必要です。

④心臓の負荷の軽減

心臓の負荷を減らし、心筋酸素消費量の過大な負荷を軽減するためには、心拍数や血圧を変動させる要因を緩和し、個々の患者に応じた日常生活動作の援助を行います。

看護のポイントとして、患者さんの状態を見ながら労作と休息のバランスを考慮することが大切です。身体的苦痛は、血圧や心拍数の増大に繋がります。体動・清潔・排泄などの基本的な日常生活行動の充足を図り、少しづつ自立していけるように援助していきます。

⑤肺炎の予防

肺うっ血があると、肺炎や気管支炎をおこしやすいです。肺炎や気管支炎では更に呼吸困難が強まり、高熱が持続すれば代謝が更新するため、酸素消費量が増し、心臓の負担が増します。口腔内の清潔を維持し、体位変換、時間ごとの深呼吸や喀痰の排出を促すなどの気道浄化を積極的に行い、呼吸器系合併症の予防を行います。

⑥尿路感染症の予防

時間尿測定のために、多くの場合は膀胱留置カテーテルを留置します。入浴は心負荷の増大につながるため、状態が安定して許可が出るまでは清拭を実施します。また、陰部洗浄を行い、陰部の清潔を保つように関わります。私の前職の病院では毎日全身清拭を実施していました。

⑦褥瘡の予防

浮腫に加え、安静臥床により褥瘡が起こりやすい状態にあります。適切な体位変換と、体圧分散マットレスや体圧分散用具を必要に応じて使用し、褥瘡の発生を予防します。病院では主に2時間毎に体位変換を実施し褥瘡の予防に努めています。

褥瘡(じょくそう・床ずれ)を防ぐための全知識【在宅専門医が解説】 – 転ばぬ先の杖
褥瘡好発部位

⑧血栓性静脈炎・静脈血栓症の予防

臥床に伴う安静や、利尿薬の投与による血液の濃縮などが要因となって、下肢の静脈血栓を起こしやすい状態になります。下肢静脈の血流を促進するために、他動的な足関節の背屈運動や下肢の屈曲運動、予防の場合には血流を促すためのマッサージを行います。また、フットポンプの装着も考慮します。

⑨心理的な援助

呼吸困難や緊急時になされる治療・処置は患者に死の不安・恐怖をもたらします。さらに、低酸素状態はそれだけで不安や不穏状態を強めます。急性状況下での苦痛を伴う症状が強い時には、現在なにが起こっており、どのような治療や処置がなされているのかを、患者がどのように理解しているのか十分に確認しながらわかりやすく説明します。