こんにちは。”ナスマガ”のYUKIです。
ようこそ!Nurse Magazineへ。
こちらも本にも低体温療法や他のICUの知識が載っていてオススメです。
低体温療法
低体温療法とは?
低体温療法はよくICUでみられる治療の一つです。
院外のVF 心肺停止心拍再開後昏睡状態の患者に対し、低体温療法,患者さんの体温を積極的に下げることによって,脳障害進行を抑制する効果を期待した治療です。
低体温で管理することで、代謝や酸素消費量を抑え脳保護(頭蓋内圧が亢進し、脳虚血や低酸素状態とならないようにすること)を目的に行います。
AHA CPRガイドライン2015を参考にしています。
使用する機械
僕が実際に経験のある機械ついてです。
低体温と名前の通り、何らかの機械で患者を低体温状態にする必要があります。
ここでは以下の3つを紹介します。
- Arctic Sun
- メディサーム
- クールライン
Arctic Sun
アークティック・サンについて
目的:低体温療法(厳格な体温管理)
特徴
- ・加温と冷却の二刀流が可能
- ・ジェルパッドによる熱伝導率が高い
- ・患者体温を測定することで、目標体温へ自動的に水温調整が可能
- ・冷却/維持/復温の肯定と条件をプログラムできる
- 注意点:処置毎にブランケットを剥がす必要がある
※CPA蘇生後の低体温に対しコストがとれる
診療報酬:12.200点/日

体表の40%を覆い使用することを推奨。
患者の体格に合わせサイズ(3S〜L)を選択し患者に貼り付けます。

メディサーム
目的:体温を下げる
注意点:
- ・ブランケット内に水を循環させ体温を下げている為、コネクタ部からの水漏れ、ホースの結露、床が濡れる
- ・処置毎にブランケットを外す手間
- ・熱伝導率が悪い
- ※コストがとれない

サーモガード
特徴:
- バルーン付きのCVC内を温度管理された生食が循環
- 体温を感知し自動調整が可能
- ※低体温療法、SAH後の発熱の抑制にのみコストがとれる
- 診療報酬:5000点/日


どんな患者に適応?
病院外での心停止(初回リズムがVF、PEA、心静止)後に自己心拍が再開した昏睡状態の患者に対し、体温管理療法(少なくとも24時間32ー36℃)で管理することを推奨。
(AHAガイドライン2015より引用)
管理
まずは、Arctic Sunで冷却を開始。
低体温療法は目標体温によって3つの時期に分けられる。
- 冷却期:34〜35度の設定温度まで冷却
- 維持期:約24〜48時間設定温度の維持
- 復温期:24〜48時間後は1〜2時間毎に0.1度を目安に復温。36度を目標にする
低体温療法では短時間で低体温にすることが必要であり、そのためには挿管管理が必要になります。
挿管人工呼吸管理+鎮静+鎮痛+α 低体温に伴う生体反応を考慮します。
冷却期
冷却期:34〜35度の設定温度まで冷却
心停止後6時間以内orROSC後4時間以内に目標体温にする
36度までは急速に冷却し、その後バイタルサインを見ながら、1時間に1度ずつ体温を下げる。
(温度センサー付きバルーンカテーテルを挿入し、膀胱温をモニタリング)
※31度以下で不整脈出現リスクが高まり、循環動態に留意
低体温開始に伴い、挿管鎮静・鎮痛管理は必須

挿管!どうしよう
どんな薬剤を使えばいいの…
鎮静鎮痛に使用する薬剤(RASSを用いて鎮静)
鎮静薬
1%プロポフォール(1v/100ml)
1%プロポフォール100ml原液IVD
(必要時2〜3mlフラッシュ)
ドルミカム(10mg/2ml/1A)
ドルミカム5A+生食40ml(total50ml)
1〜4ml/hでIVD(必要時2〜3mlフラッシュ)
鎮痛薬
(麻)フェンタニル(0.5mg/10ml/1A)
フェンタニル1A+生食40ml
筋弛緩薬
エスラックス(50mg/5ml/1A)
エスラックス5A(total50ml)
低体温による生体反応
- 循環不全
- 呼吸器合併症
- 高血糖
- 凝固能の低下
- 免疫機能の低下
- シバリング
低体温による生体反応としてこのような項目が生じます。
それでは、一つ一つみていきます。

明日受け持ちなのにどうしよう…
循環不全

観察項目
- バイタルサイン(BP、HR)
- 末梢冷感、チアノーゼ
- 尿量、濃縮尿の有無
- 不整脈の有無
- Laboデータ(Na,K,CL,Mg,P,Lac,BE,PH)
- CI,SvO2,Pa,RA,CVP(SGカテーテル挿入時)
ケアプラン
医師指示内で循環動態が経過しているか
→血圧の決定する4因子の視点(前負荷・後負荷・心収縮力・心拍数)
から状態をアセスメント
1、前負荷
少ない→輸液負荷(細胞外液、輸血、血漿代用液)
EX)ソルラクトF、RBC、FFP、4.4%ALB、ボルベン
多い→利尿薬(ラシックス、ハンプ)
2、後負荷
低い(拡張)→NAD、ピトレシン
高い(収縮)→NIC、NTG(体血管抵抗↓)
ミルリーラ(肺血管抵抗↓)
3、心収縮力
DOB、DOA β刺激薬
4、心拍数
レートコントロール
徐脈:ペーシング
頻脈:アンカロン、ヘルベッサー
リズムコントロール→アンカロン
※電解質を確認し適宜KCL、Mg補正を医師へ相談
シバリング
体温を低下させると、生体反応としてシバリングが生じます。
シバリングによる熱産生が起きると、体温低下を遅らせるだけでなく、酸素消費量の増加や代謝亢進により、脳への悪影響を及ぼします。
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前述した鎮静・鎮痛・筋弛緩薬を投与
医師の指示範囲のRASS管理を目標に流量の調整
呼吸器合併症
人は低体温になると、体温を上昇させようとする生体の反応として、体を震えさせて熱を産生させるシバリングが起こる。シバリング予防の為、鎮静薬・筋弛緩薬を投与する
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呼吸筋抑制や咳嗽反射の抑制
胸郭に冷却パッドを装着することで、胸郭運動の制限・体位制限が生じる
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気道分泌物の貯留から、肺炎・無気肺、肺水腫などの合併症をきたす
観察項目
- 呼吸音
- 痰の性状
- X-p初見
- Labo deta(PaO2、PaCO2)
- 呼吸器設定
- PIP、TV、呼吸回数
ケアプラン
- 2時間毎の体位ドレナージ(90度側臥位)→挿管チューブの牽引・計画外抜去に注意
- 気管内吸引→咳嗽反射も乏しい為、適宜Drへ気管支鏡の相談

高血糖
カテコラミン分泌亢進
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糖代謝の抑制
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インスリン分泌低下
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高血糖
観察項目
- 医師の指示確認(BS100〜180mg/dl)
- 血糖モニタリング(医師の指示回数の血糖測定)
ケアプラン
高血糖:ヒューマリンR持続開始
低血糖:50%Tziv 5%TZ持続投与
凝固能低下
低体温
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血小板数・血小板機能の低下
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APTT・PT値の延長
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易出血状態
観察項目
- 挿入部からの出血
- 下血の有無(黒色:下部消化管 鮮血:上部消化管)
- 胃管からの出血
- Labo deta(Hb,PLT,APTT,PT)
ケアプラン
- 出血初見あれば医師へ報告
- 輸血投与(RBC,FFP,PC)
維持期:中枢温を34度に設定し、24〜48時間維持する。
患者目標:脳血流の保持
観察項目
- バイタルサイン(BP、HR、BT)
- 尿(量、性状、色調)、水分バランス
- 意識レベル(瞳孔経、対光反射、共同変視、GCS、JCS)
- MMTの変化
- ICPモニター
ケアプラン
- ICP15以上の継続は頭蓋内圧亢進を意味しDrへ報告
- 脳浮腫を予防するケア→ベッドアップ15〜30度し静脈灌流を下げる
- 脳血管拡張の予防→PaCO2を30mHg台前半で管理
患者目標:血行動態の維持
観察項目
- バイタルサイン(BP。HR、BT)
- 抹消冷感
- 不整脈(PQ間隔の延長、ST低下、ブロック、PAC、PVC、VT、VF)
- 心エコー初見(VTI、EF、心拡大)
- 心疾患の既往
- Labo(Na、K、Cl、Mg、P。BUN、Cr、Lac、)
- 水分バランス
ケアプラン
- 医師指示(MAP>65)を達成できるようにアセスメント
- 不整脈出現時→周りへ周知・応援要請、Drへ報告、ABG採血、12誘導EKG、救急カート、DCの準備
- 受け持ちはコードハートの把握、空きラインの把握を確実にする
- K値の低下に注意し、医師へK補正を依頼
患者目標:肺炎、無気肺の予防
観察項目
- 呼吸音、エアー入り、左右差、胸郭の挙上
- X-p初見(胸水、肺炎、気胸の有無)
- CT初見
- ABG結果(PaO2、PaCO2、BE、P/F比)
- モニター(SpO2、EtCO2)
- 呼吸器同調
ケアプラン
- 2時間毎の体位ドレナージ(90度側臥位)→挿管チューブの牽引・計画外抜去に注意
- 気管内吸引→咳嗽反射も乏しい為、適宜Drへ気管支鏡の相談
- マウスケアの実施
患者目標:感染兆候なく経過できる
観察項目
- 挿入物の刺入部の発赤
- バイタルサイン(BP、HR、BT)
- Labo(WBC、CRP)
ケアプラン
- 清潔保持(全身清拭、陰部洗浄)
- 院内マニュアルに沿ったライン交換→感染初見あればその限りではなく、Drへ相談
- 早期警官栄養の開始(復温期以降)
患者目標:皮膚トラブルなく経過できる
観察項目
- 足背動脈の触知
- 抹消冷感、チアノーゼの有無
- 褥瘡好発部位の観察
ケアプラン
- 2時間毎の体位変換
- 適切なエアーマットの使用
患者目標:易出血状態に伴う、身体損傷を防ぐ
観察項目
- Labo(Hb、PLT、APTT、PT、INR)
- ライン刺入部の出血
- 皮下出血
- 下血、気管、口腔内、胃管、鼻腔粘膜からの出血
ケアプラン
- ラインの挿入、抜去時の確実な止血
- 口腔ケア時はスポンジブラシを用いて、愛護的に実施→口腔ジェル購入、プロペト処方依頼
- 医療保護テープ除去時は剥離剤を用いる→皮膚トラブル発生時は、褥瘡報告し適切な処置
患者目標:血糖値が安定して経過する
観察項目
- 血糖値
- 冷感、意識レベル
- 口渇の有無
ケアプラン
- 医師指示にてスライディングスケール管理
- 4時間毎の血糖測定
- インスリン持続静注管理
患者目標:麻痺性イレウスがなく経過できる
観察項目
- 腸蠕動運動の有無
- 便の性状、量
- 腹部レントゲン
- 胃管排液の性状、量
- 腹部膨満、緊満の有無
ケアプラン
- 4日毎を目安に排便コントロール
- 緩下剤の投与
- 薬剤による腸蠕動運動の促進
- 胃残の確認
- 早期経管栄養開始→バクテリアルトランスロケーション予防
- 胃管を開放し、ガス貯留を予防
バクテリアルトランスロケーションの記事はこちら
復温期:24〜48時間後は1〜2時間毎に0.1度を目安に復温。36度を目標にする。
患者目標:脳血流の保持
観察項目
- バイタルサイン(BP、HR、BT)
- 尿(量、性状、色調)、水分バランス
- 意識レベル(瞳孔経、対光反射、共同変視、GCS、JCS)
- MMTの変化
- ICPモニター
ケアプラン
- ICP15以上の継続は頭蓋内圧亢進を意味しDrへ報告
- 脳浮腫を予防するケア→ベッドアップ15〜30度し静脈灌流を下げる
- 脳血管拡張の予防→PaCO2を30mHg台前半で管理
患者目標:急激な体温の上昇がない
観察項目
- 離脱時のシバリグの状態
- 膀胱温
- ICP上昇の有無
- 抹消冷感の有無
- 1〜2日かけて1度ずつ復温(1時間に0.25〜0.5度の速さを目安に復温)
ケアプラン
- 急激な体温変化が見られた場合は、氷枕の使用、除去を行う。
患者目標:血行動態の維持
観察項目
- バイタルサイン(BP。HR、BT)
- 抹消冷感
- 不整脈(PQ間隔の延長、ST低下、ブロック、PAC、PVC、VT、VF)
- 心エコー初見(VTI、EF、心拡大)
- 心疾患の既往
- Labo(Na、K、Cl、Mg、P。BUN、Cr、Lac、)
- 水分バランス
ケアプラン
- 医師指示(MAP>65)を達成できるようにアセスメント
- 不整脈出現時→周りへ周知・応援要請、Drへ報告、ABG採血、12誘導EKG、救急カート、DCの準備
- 受け持ちは空きラインの把握を確実にする
- K値の上昇に注意し、医師へK補正を依頼→復温に伴い、維持期と異なり、K値が上昇する
患者目標:血糖値が安定して経過する
観察項目
- 血糖値
- 冷感、意識レベル
- 口渇の有無
ケアプラン
- 医師指示にてスライディングスケール管理
- 4時間毎の血糖測定
- インスリン持続静注管理
患者目標:肺炎、無気肺の予防
観察項目
- 呼吸音、エアー入り、左右差、胸郭の挙上
- X-p初見(胸水、肺炎、気胸の有無)
- CT初見
- ABG結果(PaO2、PaCO2、BE、P/F比)
- モニター(SpO2、EtCO2)
- 呼吸器同調
ケアプラン
- 2時間毎の体位ドレナージ(90度側臥位)→挿管チューブの牽引・計画外抜去に注意
- 気管内吸引→徐々に咳嗽反射の出現、必要時ブロンコ依頼
- マウスケアの実施→復温に伴い、気道分泌物や唾液の増加が起こる

以上、長くなりましたが低体温療法でした。
必ず医師はついてると思うので。
分からないことは聞いて、看護してください。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらにおすすめの転職サイト載せた過去記事があるので、見てみてください。
こちらもよければ、更新の励みになります。
よろしくお願いします。
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